ホーザン株式会社メインロゴ

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適切なチェーン長の設定

新品の自転車の交換用チェーンは必要な長さよりも長めの量が入っています。
このメカニカルアドバイスでは、自転車の適切なチェーン長を設定するさまざまな方法を段階的に説明します。

※日本語字幕あります。(設定⇒字幕⇒日本語)

はじめに

作業を始める前に、まず2種類のチェーンのタイプについて確認しましょう。
自転車のチェーンにはマスターリンクタイプとコネクティングピンタイプがあります。
マスターリンクタイプのチェーンは、マスターリンクと呼ばれる2つの取り外し可能なアウタープレートを使用してチェーンを接続します。
コネクティングピンタイプのチェーンは、コネクティングピンと呼ばれる特殊なピンを使用してチェーンを接続します。

マスターリンク(左)とコネクティングピン(右)のチェーン
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リアディレーラーのトータルキャパシティ

スポーツバイクの多くは変速ために前後に複数枚のギアを装備しています。
そのギアの組み合わせによって必要なチェーンの長さは変化します。
走行中にチェーンの長さを変えることはできないので、リアディレーラーがチェーンのテンションを適切に調整する役割を担っています。
リアディレーラーがチェーンのテンションを適切に調整できる範囲のことを「トータルキャパシティ」と呼びます。
リアディレーラーには、あらかじめ設定されたトータルキャパシティがあり、前後の歯数差の合計がそれを上回ってしまうと、チェーンのテンションを適切に保つことができず、変速不良やチェーンの脱落などのトラブルの原因となります。

フロントチェーンリングが54Tと38Tの2枚なら、その差は53-38=15
リアスプロケットが11-25Tの組み合わせなら、その差は25-11=14
歯数差の合計 トータルキャパシティ=15+14=29

チェーンの確認と取り外し

古いチェーンを取り外す前に、古いチェーンが正しい長さになっているかを確認してください。
ディレーラーを操作してフロントチェーンリングのアウター側(最大のチェーンリング)と、リアスプロケットのロー側(最大のスプロケット)にシフトします。
リアディレーラーのチェーンは、各プーリーでわずかに曲がっており、このシフトポジションに対して十分な長さがあることが分かります。
チェーンがまっすぐになる場合は、チェーンが短すぎます。

各プーリーでわずかに曲がる
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次に、フロントチェーンリングをインナー側(最小のチェーンリング)と、リアスプロケットのトップ側(最小のスプロケット)にシフトします。
この時、チェーンがたるまず、リアディレーラーのチェーン同士が接触するほど引っ張ってはいけません。
チェーンがたるんだり、リアディレーラーのチェーン同士が接触する場合は、チェーンが長すぎます。
古いチェーンの確認が終わったら、ホイールを取り外して作業を行っていきます。
ホイールを外すことで、チェーンにテンションがかからず作業性がよくなります。

リアディレーラーの位置とチェーンの張りを調整する
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マスターリンクタイプのチェーン

マスターリンクを探します。
マスターリンクタイプのチェーンの場合は、MLP-1.2 マスターリンクプライヤー などを使用してリンクを解除します。
チェーンが摩耗していて交換する場合は、マスターリンクを無視して、チェーン切りやチェーンツールでチェーンを切断するだけです。

マスターリンク
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マスターリンクプライヤーで接続を解除する
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コネクティングピンタイプのチェーン

コネクティングピンは、他の接続ピンとは見た目が異なります。
切断位置を決めるときは、チェーンにすでに取り付けられているコネクティングピンから少なくとも2,3リンク離れた位置にします。
チェーン切りをセットし、ピンを接続ピンに合わせて、まっすぐに接続ピンを押し出します。
ピンの位置がずれたり曲がったまま作業しないように注意してください。

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チェーン切りのピンを接続ピンに合わせてまっすぐに押し出す
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古いチェーンから長さを導く方法

古いチェーンの長さが適切である場合、新しいチェーンと並べて置いて長さを決めます。
この時、端部はアウタープレート同士、インナープレート同士をそろえて並べます。
マスターリンクタイプのチェーンでは、マスターリンクを挿入して正しい全長を比較します。
古いチェーンは摩耗が進むほど伸びますので、ピンの位置をそろえるようにして比較します。

マスターリンクを挿入する
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各ピンの位置を正確に合わせる
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最大のチェーンリングと最大のスプロケットから導く方法

長さを比較する古いチェーンがない場合は、この方法で最適なチェーン長さを決めることができます。
まず、フロントディレーラーをアウターリング(最大のチェーンリング)に、リアディレーラーをトップ側(最小のスプロケット)にシフトします。
新しいチェーンをリアスプロケットのロー側(最大のスプロケット)に掛け(この時チェーンはリアディレーラーには通さない)、アウタープレートの一端をフロントチェーンリングに向けて通し、5時の位置に保持します。

フロントディレーラーにチェーンを通す
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5時の位置で保持する
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マスターリンクタイプのチェーンの場合、マスターリンクの片側を取り付けます。
こうすることでマスターリンクの分の長さを加味して作業を行えます。
ここからの作業はマスターリンクタイプ、コネクティングピンタイプ共に同じ手順です。
チェーンの下部をしっかりと引き、フロントチェーンリングに合わせます。

チェーンをしっかりと引っ張る
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正確に長さを決めるために、リアスプロケットのチェーンの位置がロー側(最大のスプロケット)に完全にかみ合っていることに注意してください。
この手順ではチェーンはリアディレーラーを通っていませんが、後の工程でその分を加味します。
チェーンを連結できる位置のピンを探します。そのピンをリファレンスピンと呼びます。
リファレンスピンからさらに2つのピンを追加した位置が適切な長さですので、その位置でチェーンを切断します。

リファレンスピン
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2つのピンを追加する
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例外と考慮するべき事項

チェーンガイドを装備した自転車の場合は、チェーンの長さを決めるときにチェーンガイドを通した状態で作業をしてください。
長さを導くプロセスは「最大のチェーンリングと最大のスプロケットから導く方法」と同じです。

チェーンガイドを通した状態
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次のコンポーネントを使用している場合は、リファレンスピンから追加するピンの数が異なります。
11または12SPEEDのカセットと、リアサスペンションのないシングルフロントチェーンリングを装着したSRAMディレーラーの場合、切断位置はリファレンスピンから4つのピンを追加した位置となります。

その他の考慮するべき事項は、サスペンション装着車の場合です。
サスペンションが圧縮されることで、リアスプロケットとフロントチェーンリングの距離が変化します。
サスペンションを外し、リンケージを圧縮した状態にして説明します。

このとき、リアスプロケットとフロントチェーンリングの距離が最大になります。
サスペンションを固定した状態で、「最大のチェーンリングと最大のスプロケットから導く方法」と同じようにリファレンスピンから2つのピンを追加した位置で切断します。
この方法は、SRAM 11,12SPEED 1x(ワンバイ) システムを含む、リアサスペンションを備えたすべての自転車に適応します。

サスペンションを外す
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リンケージを圧縮する
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方程式から導く方法

自転車のチェーンは、インナープレートとアウタープレートの組み合わせで構成されています。
インナープレートとアウタープレートは接続することができ、インナー同士、アウター同士の組み合わせでは接続することができません。
そのため、チェーンは整数インチの倍数でのみ接続できます。
例えば、一般的な変速機付きの自転車のチェーンは51"、52"、53"などのチェーンが使われます。
52-1/4"、53-1/8"や52-1/2"では切ることができません。

産業用ドライブトレインの方程式より、自転車に取り付ける前に最適なチェーンの長さを計算で求めることができます。

まずは、最大のフロントチェーンリングと最大のリアスプロケットの歯数を数えます。
歯数はチェーンリングやスプロケットに表示していることが多いです。

次に、クランクボルトの中心からリアアクスルの中心までの距離を測ります(チェーンステーの長さと同じです)。
測定した距離mmをインチへ換算し、小数点以下端数は1/8"の倍数に置き換えます。

mm と インチ の換算数:1"=25.4mm

1/8" を近似値の小数に変換するためのチャート:

  • 1/8"=0.125"
  • 1/4"=0.25"
  • 3/8"=0.375"
  • 1/2"=0.5"
  • 5/8"=0.625"
  • 3/4"=0/75"
  • 7/8"=0.875"

簡易的な方程式

ほとんどの自転車では、簡易的な方程式でチェーン長を導くことができます。
フロントチェーンリングのサイズとリアスプロケットのサイズに極端な違いがある自転車の場合、後述するより厳密な方程式を使用することができます。

簡易的な方程式:L=2(C)+(F/4+R/4+1)

  • L=チェーンの長さ(インチ)計算結果を四捨五入
  • C=チェーンステー長(インチ)近似値の小数へ変換後の数値
  • F=最大のフロントチェーンリングの歯数
  • R=最大のリアスプロケットの歯数

例:42-32-22のフロントチェーンリングが装着された自転車の場合、フロントチェーンリングの歯数は42を使用してください。
同様にリアスプロケットも最大スプロケットの歯数32を使用します。
チェーンステー長が415mmの場合、インチに換算した後、小数点以下を1/8"の近似値の小数に置き換えます。

415÷25.4=16.3385…≒16.375

これらの数値を方程式に代入します。

L =2(16.375)+(42/4+32/4+1)

 =32.75+10.5+8+1=52.25

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この計算の例では、結果が52.25インチになります。
チェーンは52.25インチの位置では接続できないので、小数点以下を四捨五入して52インチとなります。

新しいチェーンの長さを測定するには、ローラーとプレートを垂直に並べて平らな面に置きます。
両端を引っ張ってチェーンをまっすぐにした状態で測定してください。
マスターリンクを使用している場合は、マスターリンクを取り付けた状態で測定してください。

厳密な方程式

厳密な方程式を使用する自転車の例は、大きなフロントチェーンリング(歯数55など)と小さなリアスプロケット(歯数11など)を備えたトラックバイクです。
さらに厳密な方程式を適用する場合は、15インチ(381mm)以下の短いチェーンステーの場合です。

ただし、これは非常に極端なケースの時にのみ考慮します。

厳格な方程式:

  • L=チェーンの長さ(インチ)計算結果を四捨五入
  • C=チェーンステー長(インチ)近似値の小数へ変換後の数値
  • F=最大のフロントチェーンリングの歯数
  • R=最大のリアスプロケットの歯数

例えば、チェーンステー長が15インチ(381mm)のシングルスピードで、フロントチェーンリングの歯数が58、リアスプロケットの歯数が11だとします。
この場合ディレーラーはありませんので方程式から1インチマイナスします。1インチはディレーラーを装着した自転車のためのものです。

この例のトラックバイクのチェーン長を、簡易的な方程式で求めた場合、47.25インチとなります。
厳格な方程式では、48.17インチとなり、それぞれを四捨五入すると簡易的な方程式で求めた場合は1インチ短すぎる結果となります。
このような極端な状況では厳格な方程式を使用します。
このシングルスピードの例でも、チェーンリングを55Tにした場合、二つの式は同じ答えになります。