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Rockshox PIKEサスペンションフォークのメンテナンス

必要な工具

サスペンションシステムは多くの部品から構成されており、それらのメンテナンスにおいては専門的な知識や専用工具などを必要とするため、プロメカニックによる専門的なメンテナンス技術が要求されます。

しかしながら、いくつかのメンテナンス項目においては、ユーザーレベルでも可能なものがあり、それらのメンテナンスを怠ったことにより、機能を著しく低下させたり、部品を損傷してしまう恐れがあります。

ここでは、ユーザーが行う事の出来る内容を前提として、Rockshox製PIKEサスペンションフォークのメンテナンスについて解説して行きます。

これらの作業内容は、全てのRockshox製コイルスプリングシステムを採用しているサスペンションフォークに対して同様に行う事が出来ます。

作業準備

リペアスタンドに自転車を取り付け、前輪を取り外します。サスペンションフォークからディスクブレーキキャリパー、およびホースなど、取り付けられている全ての部品を取り外します。

ロウワーレッグのブレース部を片方の手でつかみ、もう一方の手でクラウン部を保持し、前後にこじる事で、ロウワーレッグ内部に圧入されているブッシングの消耗度合いを確認する事ができます。

ヘッドセットのガタではなく、明らかにサスペンションフォークにガタが確認できる場合は、ブッシングの交換が必要になりますので、プロメカニックに交換作業を依頼してください。

フォーク内部に封入されているサスペンションオイルを排出するため、廃油を入れる箱を用意します。例えばカー用品店やホームセンターで販売されているような廃油箱を用意するのも良いでしょう。原則的に使用したサスペンションオイルの再使用はしませんので、それらのオイルを廃棄できる物であれば問題ありません。

これらの廃油箱をサスペンションフォークの下に設置し、サスペンションオイルを受けられるようにしておきます。

また作業時は、必ず保護メガネと保護グローブを着用します。

注意:サスペンションオイルの廃棄方法は、各自治体のルールに従って行ってください。

作業手順

サスペンションフォークの右側(乗車した状態で)エンド部にあるリバウンドスピードアジャストノブを抜き取ります。これらのノブの内側にオイルが溜まっていたり、明らかにオイルが漏れている場合は、オイルチャンバー内部からのオイル漏れ、もしくはロウワーレッグを固定しているシャフトボルトの付け根に取り付けられているクラッシュワッシャーの消耗、破損などが考えられます。

リバウンドスピードアジャストノブを取り外して確認します。

5mm六角レンチを使用して、エンド部にある左右のシャフトボルトを緩めます。またこの時、突然オイルが漏れだす可能性がありますので、十分に注意してください。
シャフトボルトは完全に取り外さず、3~4山程度ねじが見える程度まで緩め、5mm六角レンチを添えてハンマーで衝撃を与えます。

これにより、ロウワーレッグ内部で嵌め合っているシャフトをロウワーレッグから外すことができます。

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ハンマーで衝撃を与え、ロウワーレッグ内部に嵌め合っているダンパーシャフトを取り外します。

この時、左右のダンパーシャフトが完全に外れた状態になると、衝撃を与えているシャフトボルトが沈み込みます。
左右のダンパーシャフトを完全に取り外したら、シャフトボルトを全て緩めて取り外します。この時多少のオイルが流出しますので、十分に注意してください。

注意:シャフトボルトは左右で異なります。サスペンションフォーク右側にはリバウンドスピードアジャストノブが装着されるため、穴が開いており、左側には穴が開いていません。

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シャフトボルトを完全に取り外します。

ロウワーレッグを下方向に押し下げ、アッパーチューブから取り外します。アクスルを取り付けておくとロウワーレッグを取り外す際のハンドルにも使用できます。

注意:ロウワーレッグが外れにくい場合、ロウワーレッグのブレース部などをハンマーで衝撃を与えないでください。ロウワーレッグが外れにくい場合、ダンパーシャフトが完全に外れていない事が考えられますので、シャフトボルトを再度装着し、ハンマーで衝撃を与えてダンパーシャフトを完全に取り外してから再度ロウワーレッグを取り外します。

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ロウワーレッグをアッパーチューブから取り外します。

ロウワーレッグを廃油箱に置き、内部のサスペンションオイルを完全に排出します。

アッパーチューブの表面をウエスで拭き取り、傷や歪みなどが無いか確認します。軽度なひっかき傷などは大きな問題とはなりませんが、地金が出る程の傷は、オイル漏れの原因となりますので、アッパーチューブの交換を行うか、プロメカニックの指示を受けてください。

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アッパーチューブの洗浄には、イソプロピルアルコールを使用します。

イソプロピルアルコールとウエスを使用し、ロウワーレッグ内部を洗浄します。適宜下図のように木製やプラスチック製の棒にウエスを巻きつけて内部を洗浄する方法も有効です。

ロウワーレッグ内部は完全に油脂を除去する必要はなく、金属粉や水分、泥などの異物などを洗浄する事が重要です。

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棒などを使用してロウワーレッグ内部の洗浄を行います。

取り外した2本のシャフトボルトの内側には、内部の潤滑用オイルを封入するため「クラッシュワッシャー」と呼ばれる樹脂製のワッシャーを使用しています。このワッシャーは、原則的に取り付けの際、自らを変形させる事で密着性を高めています。そのため、原則的に2~3回の分解で交換する必要があります。

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クラッシュワッシャーは定期的に交換する必要があります。

一般的なメンテナンスの場合、ダストシールの交換は必要ありません。ただし、ダストシールの内部に設置されている「フォームリング」と呼ばれるスポンジは、消耗によって交換したり、サスペンションオイルを注油したりというメンテナンスが必要になります。

この時、サスペンションオイル(15wt)やRed Rumと呼ばれる専用のオイルを使用してください。

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フォームリングは常にオイルで潤滑されている必要があります。

アッパーチューブのダンパーシャフトを完全に引き出し、ロウワーレッグを取り付けます。この時、ダストシールをアッパーチューブ先端で傷つけたり、変形させないようにします。ダストシールがしっかりとアッパーチューブに密着しているかどうか確認し、不具合がある場合はやり直してください。

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ロウワーレッグを引き上げ、ダンパーシャフトとロウワーレッグが完全に嵌め合わない位置に保持します。これは、ロウワーレッグ下側の穴から、潤滑用のサスペンションオイルを封入するためであり、その隙間を作る事が目的です。

サスペンションフォークが上方斜め45°程度になるようにリペアスタンドに取り付けられている自転車を操作して保持します。左右それぞれのロウワーレッグ内部に注射器などを使用してサスペンションオイル(15wt)を封入します。

一般的には約15ml程度となりますが、詳しくはサスペンションフォークの取扱説明書、あるいはサービスマニュアルをご参照ください。

ロウワーレッグをアッパーチューブに挿入します。
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上図の様に、ダストシールのリップを巻き込まないように注意してください。
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注射器などが無い場合は、小さめの漏斗などを使用して作業する事も出来ます。
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上方を向いたままのサスペンションフォークのロウワーレッグを完全に押し下げると、ダンパーシャフトがロウワーレッグ内部に接触します。

右図のようにダンパーシャフトとロウワーレッグがしっかりと嵌め合っていない場合、六角レンチの先などでダンパーシャフトの位置を修正し、シャフトボルトを取り付ける準備をします。

シャフトボルトを取り付ける前に、ダンパーシャフトを正しい位置に導いてください。

注意:シャフトボルトが完全に締めつけられるまで、絶対にサスペンションフォークを下向きにしないでください。封入したサスペンションオイルが流出してしまいます。

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左右のシャフトボルトを確認し、正しいシャフトボルトを取り付けます。穴付きの物はサスペンションフォークの右側、穴が無い物は左側に装着します。トルクレンチを使用してシャフトボルトを完全に固定します。(締め付けトルク:6.8N・m)

イソプロピルアルコールを使用して、サスペンションフォークに付着したオイルや汚れなどを完全に除去します。万一、サスペンションオイルなどの潤滑剤が残っていると、それらがブレーキシステムなどに付着し、作動不良の原因になる事があります。

作業終了後は、サスペンションを作動させて、問題が無い事を確認してください。

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