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フレームのアライメント

必要な工具

ここでは、フレームのアライメントとParkTool FAG-2フレームアライメントゲージ の使用方法について解説して行きます。

フレームのアライメントについて考える事は、プロメカニックやフレームビルダーにとって最も重要な事の一つと言えます。あなたの自転車が真っ直ぐに走行しなければ、フレームのアライメント調整が必要な場合があります。

フレームのアライメントは、単にフレームのセンターだけでなく、フォークやフレームのドロップアウトエンドのアライメントと相関関係にあります。

通常、フォークやフレームのドロップアウトエンドのアライメントは、フレームのアライメントを全て確認した後に行わなければなりません。一般的にフレームのアライメントにおける問題点は、フレームの前三角に比較して、後三角が正しく配置されていない事に起因します。前三角のアライメントを確認する工程は、本章の最後に記載しています。

フレームのアライメントは、自転車の性能を正しく発揮させるために大変重要な要素です。センターの出ていない状態におけるフレームを使用した場合、以下のような不具合が発生する可能性があります。

  • ・ ホイールが正しくフレームセンターに配置されないため、直進安定性、およびハンドリング性能が著しく低下する恐れがあります。
  • ・ チェーンラインが狂うため、変速装置のセッティングに不具合が発生する、もしくは変速性能が著しく低下する恐れがあります。
  • ・ ホイールの着脱が困難になる可能性があります。

しかしながら、これらのアライメント調整はあくまでも相対的なものである事について理解しておくことが必要です。

一般的にコンポーネントメーカーにおいては、一定の交差範囲を想定した上で設計、製造されています。そのため、機能上問題とされないレベルでの必要以上の精度については、正常の範囲とされており、逆に必要以上の精度を追求する事により、他の部分での不具合が発生する事もしばしば発生する事があります。

ParkTool FAG-2 フレームアライメントゲージ は、ホイールのセンターチェックに使用するリムセンターゲージと同様の操作方法によって、簡単にフレームセンターをチェックする事が出来ます。左右いずれかのフレームの状態をチェックし、その反対側が同様の状態になっているかどうかをチェックする仕組みです。

下図のフレームでは、前三角に対して後ろ三角が左方向にズレている事がわかります。

注意:全てのフレームのアライメント修正は、非常に高度な技術と知識を必要とします。また、全てのフレームおいてアライメント修正ができる事ではありません。特に肉薄のパイプを使用している物や、カーボンフレームなど、修正に適さない物が存在しますので、アライメントを確認した上で、修正が必要だと判断した場合、必ず各メーカーの指示に従ってください。

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フレームのアライメントが正しく調整されていない事に起因する問題点に対して、他の解決方法が存在する事があります。例えば、ハブスペーサーを追加したり取り外したりするのもその一つです。そのために意図的にホイールセンターをずらす事も必要になる場合があります。

ボトムブラケットシャフト長の違いによるチェーンラインのズレを、リアスプロケットの位置を移動させる事でチェーンラインを合わせると言う事もその一つと言えるでしょう。

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FAG-2 フレームアライメントゲージ の使用方法

フレームのアライメントをチェックする前に、ハブオーバーロックナット寸法を測定します。ハブロックナットの外側から外側までをしっかりと測定し、参考としてこの数値を記録します。

次にフレームドロップアウトエンド幅を測定します。フレームドロップアウトエンド幅がハブオーバーロックナット寸法と比較して、あまりに広い、もしくは狭ければ、正しくホイールを装着する事ができません。これらの寸法差は、一般的に1~2mmいないが適正範囲内と考える事が出来ます。

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また、左右のフレームドロップアウトエンドの厚みの違いにも注意が必要です。

フレームのアライメントをチェックする際、これらの厚みが違う点について留意し、その差を考慮する必要があります。例えば下図のようなリプレーサブルタイプのドロップアウトハンガーは、左側のドロップアウトエンドよりも2mm程度厚くなる傾向にあります。これらのドロップアウトハンガーが取り付けられている場合、左側のドロップアウトエンドとFAG-2 のポインターの間には2mmのギャップがある事を忘れないでください。

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フレームのヘッドチューブ左側とシートチューブが接するように、FAG-2 の黒い柄の部分(ゲージ部)を当てがいます。この時、ゲージ部がヘッドチューブの突起や溶接部、およびボトルケージなどの突起に当てが割れていないか、しっかりとフレームパイプ部に接地しているかを確認します。

チェーンステイの長さに合わせポインター(青色)部を調整し、ポインターがフレームドロップアウトの外側に接触するまでノブを回して調節します。

注意:サイズが小さく、ダウンチューブが大きなフレームにおいては、シートチューブとヘッドチューブにFAG-2 のゲージ部を正しく接地出来ない場合があります。その場合、ヘッドチューブに対して適宜当て木などを併用して測定する必要があります。また、シートチューブが存在しないフレームなどの場合、シートポストを押し下げて、シートチューブに代替してチェックする事が出来るかも知れません。

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フレームの左側をチェックした後、FAG-2 をそのままの状態でフレームの右側に当てがい比較します。出来るだけ左側と同じ位置の右側にFAG-2 を接地させ、右側のフレームドロップアウトエンドの外側にポインターが接地するかどうかをチェックします。

その結果、以下の3つのパターンに分類されます。

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リアドロップアウトのセンターが正しく出ています。

  • ・ 左右それぞれの3点(ヘッドチューブ、シートチューブ、フレームドロップアウトエンド)全てにおいて、隙間なくゲージを接地させる事が出来た。
  • ・ このフレームの後三角は前三角に対して狂いなく設置されています。
  • ・ 万一、フレームドロップアウトエンド幅がハブオーバーロックナット寸法と比較して広い、もしくは狭いならば、左右のステーを同じ寸法だけ調整する必要があります。
    ※修正作業後は、再度フレームのアライメントをチェックしてください。

リアドロップアウトは、フレームの仮想中心線より左側にオフセットしています。

  • ・ このフレームの後ろ三角は、フレームの仮想中心線より左側にズレています。
  • ・ センターがズレている量は、ポインターと右側のフレームドロップアウトエンドとの隙間の半分になります。例えば、隙間が1mmであれば、ホイールがフレームの仮想中心線に対して左側に0.5mmズレて取り付けられることになります。
  • ・ 万一、フレームドロップアウトエンド幅がハブオーバーロックナット寸法と比較して広い場合、左側のステーをフレーム中央に矯正する事で調整します。また、狭い場合は、右側のステーを広げる事で調整します。
  • ・ フレームドロップアウトエンド幅がハブオーバーロックナット寸法と比較して問題が無い場合、左右のステーを右側に矯正する事で調整します。
    ※修正作業後は、再度フレームのアライメントをチェックしてください。

リアドロップアウトは、フレームの仮想中心線より右側にオフセットしています。

  • ・ ヘッドチューブにゲージがしっかりと接地し、ポインターがフレームドロップアウトエンドに接地しているにも関わらず、ゲージがシートチューブに接地していません。
  • ・ このような場合、ゲージをヘッドチューブとシートチューブに接地させると、ポインターがフレームドロップアウトエンドに接地しなくなります。
  • ・ このような場合、フレームの右側を基準点としてFAG-2 をセットし直し、そのままFAG-2 を左側に移動させチェックを行うと、どの程度リアドロップアウトエンドが右側にズレているかが測定しやすくなります。
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修正を行う上で、フレームをしっかりと保持するためには、ボトムブラケット部を完全に固定する事が最も安全で効率的だと考えられます。そのままの状態でベンチバイスなどに固定すると、ボトムブラケットハンガーが変形してしまう恐れがありますので、使用しないカップ&コーンタイプのスチール製のボトムブラケットカップを取り付けると良いでしょう。

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フレームドロップアウトエンドやステーを矯正する場合、工具などは使用せず、手の力を利用して優しく矯正する方法が最も効率的だと考えられています。FAG-2 やノギスなどを使用してチェックを繰り返しつつ、ゆっくりと少しずつ矯正を行います。

適宜、FFS-2 フレーム・フォーク修正器を使用する場合、手の力を利用するよりも強力に矯正を行う事が出来ますが、必要以上に矯正しすぎてしまう事がありますので十分な注意が必要です。

フレームの矯正を行う際は、必ず一度に一つのステーを矯正するようにしてください。常に後三角のフレームドロップアウトエンド幅とハブオーバーロックナット寸法を意識して、必要以上に矯正する事のないよう、少しずつ作業します。

一般的には、これらの矯正が不要になる交差範囲は1~2mm以内と考える事ができます。機能を最優先として、必要以上に数値にとらわれる事で、フレームを破損してしまう恐れもありますので、場合によっては必ずメーカーの指示に従ってください。

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メインフレームのチェック

前三角と呼ばれるメインフレームは、一般的にヘッドチューブ、トップチューブ、シートチューブ、ダウンチューブと呼ばれる4本のパイプによって構成されています。

これらのメインフレームにおける重大なアライメント不良は、極まれなケースだと言えます。万一、これらのメインフレームにズレが発生しているようであれば、矯正を行う事が大変困難であり、あまり推奨されていません。

ヘッドチューブとシートチューブは、必ず平行でなければならず、これを決定する代表的な方法として、フレームビルダーによって使用される定盤によって決定されています。定盤に接地された専用の治具を使用する事で、最も確実で効率的なアライメントのチェックが可能です。

フレームビルダー以外の作業者は、一般的に定盤を持っていない事がほとんどです。そのため、最も実用的な方法で前三角のチェックを行う方法として、角度計を利用する方法が挙げられます。
アライメントをチェックするフレームをリペアスタンドに取り付け、ヘッドチューブの角度を測定します。

次にフレームの取り付け角度などを動かさず、シートチューブの角度を測定します。それぞれの角度を比較し、公差が±1°以内になるようであれば許容範囲内にあると考える事が出来ます。

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万一、これらのアライメントチェックに置いて、許容範囲外にあると判断された場合、矯正作業は大変難しく、大きな力が必要になるため、推奨されません。
このような場合、適宜製造メーカーの指示に従ってください。

ヘッドチューブの角度を測定します。
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シートチューブの角度がヘッドチューブの角度と比較し、±1°以内であれば問題ありません。
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フレームの破損

フレームパイプや溶接部は、様々な理由により破損する事があります。単なる溶接不良やデザイン上の制約による強度不足などだけでなく、乗員が引き起こす事故なども破損の大きな原因となります。

フレームの破損は、一般的に溶接部から発生する事が多く、金属疲労などに起因する破断なども珍しくありません。また、フレームの矯正作業に起因するフレーム破断なども決して少なくはありません。

事故によるフレームの破損においては、現実的に修復する事は不可能であると考える事が出来ます。スチールフレームにおいては、破損したパイプを交換する事が見受けられますが、アルミフレームやカーボンフレームなどにおいては、現実的にそれらの交換修理は行う事ができません。

フレームの破損状況を確認するには、掃除が最も効率的な方法です。パイプが歪む事でペイントにクラックを生じさせる事があります。この時、ペイントのみの破損なのか、フレーム自体の破損なのかを慎重に確認する必要があります。

右の2つの図は、それぞれボトムブラケットシェル付近の破損についての物です。

最初の画像は、わずかなペイントのクラックでしたが、内部を詳細に確認するとフレームのクラックである事が確認されたものです。
右の画像は、左側のチェーンステイに発生したクラックです。

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カーボンフレームにおいては、最もクラックが発生しやすいとも言えます。

右図は、カーボンフレームのボトムブラケットハンガーに補強のために接着された専用の金属製スリーブとカーボンフレームが見事に割れています。このスリーブとカーボンフレームとに発生したクラックにより、完全にスリーブが外れてしまった例です。

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右図のフレームダウンチューブは、前方向からの衝撃があった事を表しています。

ダウンチューブは最も力を受けた部分で折れ曲がり、金属組織が完全につぶされています。このようなケースでは、ダウンチューブを逆方向に戻そうとしても、折れ曲がった部分で破断してしまうため、修理は不可能であると考えられます。

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フォークブレードを曲げるような外部からの衝撃は、しばしばフォーククラウンに対して損傷を与える場合があります。

右図のような場合、キャリパーブレーキ取り付け穴の上部が最も弱い部分であると言えます。前方からの衝撃によってフォークブレードが前方から押し込まれ、ステアリングコラムとクラウンとの継ぎ目に力が集中する事で、クラウン部分の破断が発生したと考えられます。
このような場合、修理は不可能であると考えられます。

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