ホーザン株式会社メインロゴ

ホーザン株式会社メインロゴ

お問い合わせ よくあるご質問

アジャスタブルタイプ(カップ&コーン式)ボトムブラケットの調整

必要な工具

ここでは、アジャスタブルタイプ(カップ&コーン式)ボトムブラケットの調整方法について解説しています。

リア用スプロケットは、一般的に以下の2つの手法によってハブに取り付けられています。

アジャスタブルタイプボトムブラケットは、一般的にカップ&コーン式と呼ばれることもあります。
アジャスタブルタイプボトムブラケットを調整する上での基本概念として、ベアリングの回転をできるだけスムーズに、またスピンドルにガタが全くない状態を維持することが大変重要です。
ベアリングカップ(カップ)内部にあるベアリングに対して、玉押し(コーン)を押し付けることでスピンドルのガタを調整することができますが、同時にコーンをベアリングに対して押し付けすぎることで、ベアリングのスムーズな回転を妨げ、場合によってはカップを傷つけてしまうことがあります。
これらカップとコーンの適切な調整ができて、初めてボトムブラケットの性能を発揮できることになります。

このようなアジャスタブルタイプボトムブラケットは、長期間の使用においてカップやコーン、およびベアリングに消耗による傷や凹みが発生します。
ある程度のものはカップとコーンの調整で解消できるものもありますが、著しい部品の変形の場合は、それぞれの部品を交換する必要があります。

ボトムブラケットには、大別して次のような3つの種類が存在します。

1. 3ピースボトムブラケット(カートリッジ型)

ここ数年で最も普及しているタイプのボトムブラケットです。多くのメーカーは工業型のシールドタイプベアリングを採用し、多くの調整を必要としない簡単な着脱が可能なボトムブラケットを開発しました。
しかしながら、これらのボトムブラケットはグリスアップや玉当たりの調整といったメンテナンスが構造上できない仕組みになっており、消耗や破損などがあった場合は、部品を丸ごと交換する必要があります。
これらのボトムブラケットの着脱や調整の詳細については、以下のページをご参照ください。

» カートリッジベアリングタイプボトムブラケットの着脱

2. 3ピースボトムブラケット(アジャスタブル型)

これらのボトムブラケットの多くは、フィックスドカップ、スピンドル、アジャスタブルカップ、ロックリングの4つの部品で構成されています。
車体の右側に装着されるフィックスドカップは、専用レンチを使用して、締め切るタイプのカップでロックリングを持ちません。
一方、車体の左側に装着されるアジャスタブルカップは、カップ本体にピン型のスパナを使用できる様、いくつかの穴が開いており、その外側にいくつかの切りかきを持つロックリングを装備しています。
また、カップの中には専用のボールベアリングとスピンドルが収まっています。
これらのボトムブラケットは、メンテナンス性に優れているだけでなく、それぞれの部品を独立して交換が可能で、大変効率的な特徴を持っています。

※画像をクリックすると拡大できます

3. 1ピースボトムブラケット、またはアシュタブラ型ボトムブラケット

これらのボトムブラケットは、旧式のSchwinn社やJuvenile社、またはいくつかのBMXタイプやビーチクルーザーなどの車種に採用されているタイプのボトムブラケットです。
クランクは1本の硬材から加工されており、片方のペダルから反対側のペダルまで、ボトムブラケットシェルを通してつながっています。

これらのボトムブラケットの着脱や調整の詳細については、以下のページをご参照ください。

» 1ピースアジャスタブルタイプボトムブラケット (アシュタブラ型)の調整

ベアリング調整とその“フィーリング”

ベアリングは大変硬度の高い鋼球です。表面は精密に研磨され、限りなく球に近づけられます。
それらのボールベアリングは、ベアリングカップとコーンの間を転がります。

左上の図は、200倍に拡大した高品質な製品のコーンの画像です。研磨作業時に発生する線状の傷を見ることができるでしょう。また消耗によってわずかに発生した凹みも見られると思います。

次に左下の図は、同じく200倍に拡大したボールベアリングの画像です。確かにわずかな傷などが見受けられますが、カップやコーンよりも比較的なめらかであることがお分かりになると思います。

先に申し上げた「限りなく球に近づけられる」と言いましたのも、これらのボールベアリングの精度は、メーカーの技術力やモデル、価格などといった要素により差があります。
そのため、それぞれボトムブラケットに使用されるカップやコーン、またボールベアリングの精度に依存される「滑らかさ」には、多くの差があり、絶対的なものは単純に価格に比例するといっても過言ではありません。

それぞれのモデルによっての滑らかさを追求するためには、「できるだけ」スムーズにベアリングが回転し、またガタのない状態を作り出すことが重要と言えます。

※画像をクリックすると拡大できます

※画像をクリックすると拡大できます

カップやコーン、ベアリングの消耗具合を簡単にチェックする方法をご紹介します。
まず、チェーンの位置をリアスプロケットの最も小さいギアにかけ、フロント側はチェーンを内側に外し、チェーンリングが引っ掛からないように維持します。
クランクを勢いよく回転させ、一方の手でフレームを保持します。
保持した手が、フレームを通じてわずかに感じるゴリゴリ感やガタを感じることがでたら、ベアリングやカップ、コーンの表面に傷がついて消耗していることになります。

一般的には、スピンドル、カップ、コーン、ベアリングの順に消耗していく傾向にあります。

※画像をクリックすると拡大できます

【調整手順】

下記の調整手順は、正常な状態のボトムブラケットを前提としています。
この調整手順で解決できない回転不良やガタは、いずれかの部品が著しく消耗している、もしくは破損している可能性がありますので、適宜部品を交換してください。

わずかな玉当たりの変化によって、ボールベアリングの回転性能やガタは大きく変化します。そのため、ボトムブラケットの調整においては、できるだけ少しづつ調整することが重要です。
これらの調整に慣れていない方は、下図のように、左側ボトムブラケットシェルの下部にマスキングテープを貼って調整量を分かりやすくするためのマーキングをしておくことをお勧めします。
アジャスタブルタイプボトムブラケットは、スピンドルと2つのカップで構成されます。車体の右側に当たるカップは、調整が不要の締め切りタイプのため、フィックスドカップと呼ばれています。
これらのボトムブラケットは、車体左側のカップで調整が行われており、このカップはアジャスタブルカップと呼ばれています。

特に車体右側のフィックスドカップは調整をする上での基準となる重要なカップであるため、カップの状態の確認はもちろん、緩みやガタなどがないかしっかりと確認してください。

  • 1. クランクアームを取り外します。
    ※クランクアームの取り外しに関する詳細については、以下のページをご参照ください。
» クランクセット(ISISドライブ、Octalinkタイプ)の着脱
  • 2. 車体左側のロックリングを反時計方向にゆるめます。
  • 3. 車体左側のアジャスタブルカップを反時計方向に1 / 2回転ゆるめます。
  • 4. 車体右側のフィックスドカップを専用のレンチを使用して反時計方向に締めつけます。この時、しっかりと締まっていれば問題はありません。
    万一、緩みが発生している場合は、反時計方向にしっかりと締めつけます。
  • 5. 右側のクランクアームのみを取り付けます。
    これにより、ガタをチェックする時、クランクアームをこじることで簡単に作業が可能です。
  • 6. 静かにアジャスタブルカップを時計方向に回し、ちょうどカップとベアリングが接触したポイントで止めます。
  • 7. ここでマーカーを使用して、このポジションを記憶させます。アジャスタブルカップに一つマーキングを行い、同じポイントのフレーム側にも同様にマーキングします。またフレーム側に1mm間隔で時計方向と反時計方向にそれぞれ4点ほどマーキングしておきます。
※画像をクリックすると拡大できます
  • 8. 先ほどマーキングしたポイントをずらさない様、アジャスタブルカップを専用レンチで固定しながら、ロックリングを時計方向に回してアジャスタブルカップを完全に固定します。
  • 9. スピンドルの回転がスムーズかどうか、また右側クランクを左右上下にこじり、ガタがないかを確認します。
  • 10. スムーズな回転ながらも、スピンドルにガタがある場合は、アジャスタブルカップの締めこみが緩い事を表しています。また、スピンドルにガタが生じていないが、スムーズな回転を得られていない場合は、アジャスタブルカップの締めこみすぎを表しています。
  • 11. スピンドルがスムーズに回転し、ガタがない状態ができるまで、この作業を繰り返します。
    その際、先ほど記したマークを参考にしながら、少しづつ作業していきます。
  • 12. 最後にアジャスタブルカップに記したマーキングを拭き取り、フレームのマスキングテープを丁寧に外して終了です。

注:ベアリングやカップ、コーンが消耗していたり、破損している場合、スムーズな調整をすることはできません。
最も最善の解決策は部品を交換することですが、一時的に調整を行う場合などは、スムーズな回転よりも、ガタの解消を優先させると良いでしょう。

【シマノ Dura-Ace、XTR専用アジャスタブルボトムブラケットの調整】

この専用ボトムブラケットは他のアジャスタブルボトムブラケットと同様にカップ&コーン式を採用し、左側のカップで調整する構造になっています。
この専用ボトムブラケットには、左右にそれぞれニードルベアリングとボールベアリングを採用しています。
オーバーホール時にはそれらのベアリングを取り外し、パーツクリーナーなどでしっかりと洗浄する必要があります。

※画像をクリックすると拡大できます

※画像をクリックすると拡大できます

【Dura-Ace】

車体左側のアジャスタブルカップには、着脱や調整時に工具を嵌めるために、専用のスプラインを設けています。着脱や調整の際にはParkTool BBT-22 BBT-32 ボトムブラケットツール など、それらのスプラインに適合した工具を使用して行います。
また、アジャスタブルカップを固定するロックリングには、ParkTool BBT-7 ボトムブラケットロックリングツールなどを使用して固定します。
下図は、スピンドルのガタのチェック用に右側クランクアームを装着しています。

※画像をクリックすると拡大できます

【XTR】

XTR用アジャスタブルボトムブラケット(BB-M950)もDura-Ace同様に調整可能なシステムを採用しています。
これらのカップの着脱や調整には、ParkTool BBT-8 ボトムブラケットツールを使用します。
また、Dura-Ace同様にアジャスタブルカップの固定に使用するロックリングには、ParkTool BBT-7 ボトムブラケットロックリングツールなどを使用して固定します。

※画像をクリックすると拡大できます